見つけておねがい見つけないで

幸福は証明できない

悲しい時はすぐに泣く

 悲しい時は存分に、涙が枯れるまで泣いたほうがいい。予定も仕事もキャンセルして、家で大声をあげて、頭が痛くなるまで泣くのがいい。我慢しているうちに悲しみが悲しみとすら認識できない彼方にいってしまうと厄介で、手がつけられない化け物になって襲ってくる。小さな悲しみを無視しないで、その度に泣いてしまうのは生きていく上で大事な営みだ。

 悲しい時に物事を考えるのはやめた方がいい。どんなに理屈が通ってたって、通ってなくても、その正しさは自分を追い詰めるだけと知った。ポリシーとかいう抽象的なものでがんじがらめになるより、明日のご飯は何を作ろうかとか冷蔵庫にあるひき肉はだめになってないかとか、そういうことを考えるようにしたい。

 今までうまく対処しようとしすぎた。どこで無理が生じることは半ば分かっていたけれど、騙し騙しやってきた。が、壊れる瞬間は突然で、これまで是としていた価値観がバラバラに砕けて制御できなくなった。坂を転げ落ちるとはまさに。滑り落ちていくような感覚の中、もう何かにつかまることも諦めてただただ重力に身を任せるような日々だった。思い出すと頭がぼうっとしてくる。

…….嘘だ。もっと必死だったじゃないか。喉元過ぎて熱さを忘れたのだろうか。必死で必死で藁をも掴む思いで、日々、でも何をしていたんだろう。思い出しても美しくないものは、自動的に闇に葬り去るシステムになっているのか? 

何をしていたんだろう。思い出せないような記憶に飲み込まれる前に、私はただ泣くことしかできない。