見つけておねがい見つけないで

幸福は証明できない

話の展開手法と完結まで持っていく方法を探ってみる①本谷有希子『異類婚姻譚』

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圧倒的に話の起承転結がおけないので、いつまでたっても話が完結させられない。

永遠に「承」だし、たまに「転」したと思ったら転がりっぱなし。

フィールド外に転がっていってしまった登場人物にはもう感情をつけられないから、「あんた、誰」的な状態になって終了.....。

 

どうにかしないと永遠に世に出ていけない。

 

本当は表現の部分、「このシーンでこの言葉選択してきたか〜〜〜〜〜〜」、この一文で景色がざっと変わったよね!みたいなことにミゾミゾしたい。だけど足りないところを補わないと多分永遠に「良い鑑賞者」で終わってしまうと思うので。

それは私が望むところではないから、少し気が進まないけど、もう少しざっくりした「構成」に目を向けて、物語を読んでいこうと思います。

 

このシリーズは、まずは既存の優れた小説を逆算して、物語が完結するまでに、どういう「構成」で書かれているかを把握しようという試みです。

 

arama.hatenadiary.jp

 

<構造>

起→

導入シーン

▲具体テーマ(顔の同一化)が問題提起される

承→

説明シーン① 登場人物の紹介、具体テーマ(顔の同一化)について解説

▲主人公以外の言葉で具体テーマの解説がされることで、説得力を持たせる&物語に奥行きを見せる効果がある

 説明文→旦那の生態について

 -----出来事① 旦那の生態について

 -----出来事② 旦那の生態について

▲抽象→具体×2の流れ。

 旦那がどんな人物なのか、その姿、形を想像できるレベルまで

転結→

 説明文→旦那の顔の変化について 

 -----出来事③ 旦那の顔が変化した夜のこと

▲後の「誘惑」という言葉につながる

 

 

序1. →

説明シーン② キタヱさんが猫を捨てる理由

起2. →

 -----出来事0 旦那の生態について

▲回想シーンとして挿入、結末に納得感を与えるための伏線

 -----出来事④ 旦那の生態について

承2.→

説明シーン③ 三者の結婚観、顔が同一化することの意味

 ▲これも主人公以外の言葉で具体テーマの解釈が解説がされることで、説得力を持たせる&物語に奥行きを見せる効果がある。何が言いたいの?とならないためには、第三者の台詞として語らせるといいのかも......

 説明文→結婚観について納得

転2. →

 -----出来事⑤ ゲームばかりする旦那、梨を噛み砕いた話、性行為

 ▲今回いちばん流れの理解が難しかった部分。これは頭で考えてどうこうもっていける展開ではないような気がしたけど、一体化=性行為で表現は定石だと思うからある意味、綺麗な流れなのかも。ここが書けたら芥川賞だと思うわ()。

破1.→

説明シーン④ 猫を捨てにいくまでの流れの説明

急1.→

説明シーン⑤ キタヱさんが猫を捨てにいく決意をする

 ▲起承転結というより序破急、急の部分で、1(猫を捨てる話)と2(旦那との一体化の話)が関連し始める。「誘惑」という言葉が二つの話を繋ぐキーワードになっている。

転2. →

説明シーン⑥ 旦那の顔が崩れていく理由がはっきりする

 ▲「急」で関連させた話に対して、主人公の納得があって、一旦「結」。2つの話を関連させる手法はこうして成り立つのか!

 

起→

 -----出来事⑥ キッチンで揚げ物を作る旦那

承→

 -----出来事⑦ キッチンで揚げ物を作る旦那

 ▲同じ行為を繰り返しながら、だんだん核心に迫っていく手法、行為の意味を解説するときに有効、「サンちゃんの顔が似てきてくれて嬉しい」の言葉に集約される

 説明文→自分の顔が崩れ始める

転→

 -----出来事⑧ 猫を実際に捨てにいく

 説明シーン⑦ 顔が似ることの意味を別の目線から解説

 ▲ここで物語を解説するキーマンとなる「アライ主人」が出てくる。人の形をするとかしないとか抽象的なテーマを一段易しくして、ヒントを与える役割を果たす。主人公が感じてる違和感を浮遊させないように。

結→

 -----出来事⑨ 猫を捨ててからの帰り道

 

序→

会話シーン 揚げ物を食べたくない→それでも食べてしまう→一体化

▲急展開が起きる次段の印象をより色濃くするために置かれた布石のようなシーン

破→

会話シーン 

自分の真似をする旦那

本音をぶちまける、本音を見抜かれていることを知る

姿が変わればいい

予想外のものに変わる

急→

山へ。

▲本音は最後の最後までとっておいて一気に畳み掛けて結末へーー

ここだけなら私にも書けると思った、嘘でだ、最後に変身するものが「意外」すぎるし、この展開自体が一筋縄ではいかない感情の権化だから、やっぱり書けない()。

<構造化してみてわかったこと>

シーンの使い分けと組み合わせ方によって物語は結末に向かって進む

主に2つのシーンに分けられる。

説明シーン(状況や場面の説明に力点が置かれるもの、内心や抽象度の高い現象に対して解説が加えられるシーン。情景描写や人間の行動はそれほど出てこない)と、出来事シーン(情景描写や人間の行動によって暗喩するもの)

 

抽象度の高いことは要所、要所で解説がされている

話が飛んでいっちゃわないように抽象度の高いことには解説が必要なんだね。この小説で使われているのは、出来事シーンで登場人物の具体的な行為をもって表現するとか、第三者に解説させるなどの手法。

この小説にはあまり出てこなかったけど、情景描写で景色とか空気を伝える手法はよくみる。逆にいえば私は今までここしか感じとれていなかったのかもしれない。

 

自分にしか理解できない文章とか、自分にすら理解できない文章になっちゃうのを防ぐためには、ある程度「伝わる」ことを意識するのも必要なのですね。

 

プロットは起承転結か序破急で一旦作った方がいい

やはりプロットは必要なのかも。起承転結と序破急の中に、説明シーン、出来事シーンを置くところまでできれば話の骨子は固まりそう。

 

シーンの切り替えは映像化できるかどうか、動詞があるか。

舞台のシーン切り替えみたいなのを意識すると書けそう。一旦、ひとつの話が終わったら、幕が降りてくる。舞台にいる登場人物が変わって、彼らが動き始める感じ。動画に撮った時、「この人たちが何をやっているか」が分かるかどうか。

 

<まとめ>

・ただただ体力と時間と頭を使った読み方だったので疲労がすごい。これ何冊やればいいの??

・でも、単に本の感想を感情的に書くよりも、実作には近づいた気がする。

・別にブロガーになりたい訳ではないので。

・次は綿矢りさとか三島由紀夫でやってみたい。あと伊坂幸太郎奥田英朗でもやりたい。

・自分に足りてないものばかり見えて辛かったけどこれを使えば、私の中にいるいろんな人格の形たちが動き出すかもと思うとワクワクする。

・逆に、これを素養と呼ばずに何というってくらい、自信のなさをぶん殴れるような自分の文章の強みのようなものがうっすら見えた気がする。

本谷有希子、すごかった。気持ちよかった。